自転スピンです。毎日レバレッジのことばかり考えています。
レバレッジをかけて先物やCFDを長期で保有したときに原指数の日々の騰落率に対して何倍の騰落率になるのかがよくわからなくわからなくなってしまったため調べていたのですが、
その際に実効レバレッジという言葉を初めて知り、実効レバレッジによって騰落率を説明できることがわかった(知っている人には当たり前な話だと思いますが)ので、備忘をかねて書き残しておきます。
まとめ
- (取引開始時の)レバレッジと実効レバレッジは異なる
- レバレッジをかけているときの評価額の騰落率は、もとの価格の騰落率に対して実効レバレッジ倍したものになる(レバレッジ倍ではない)
- レバレッジETFは実効レバレッジを毎日一定になるように調整している
- SPXLであれば毎日実効レバレッジが3倍になるように調整している
- 指数の先物やCFDを長期保有すると毎日実効レバレッジが変化するため、原指数の騰落率からの倍数も変わる
- ある時点から現在までの騰落率は、原指数の騰落率の一定数倍になる
レバレッジと実効レバレッジ
レバレッジという言葉がありますが、これは取引開始時のレバレッジを意味しているようです(追記: これ怪しいです。実効レバレッジを意味していることも普通にありそうです。最大レバレッジという意味も)。
つまり、10000円の先物の買いポジションひとつを1000円の証拠金で建てたときはもちろんレバレッジ10倍で、そのポジションが12000円になったときもレバレッジ10倍のままです。
対して、実効レバレッジという言葉があります。これは、現在価格を証拠金と評価損益を足した値で割った値を意味しているようです。
つまり、10000円の先物の買いポジションひとつを1000円の証拠金で建てたとき実効レバレッジは10倍(10000 / (1000 + 0)
)で、
そのポジションがが12000円になったときは、実効レバレッジは4倍に下がります(12000 / (1000 + 2000)
)。
9500円になったときは、実効レバレッジは19倍に上がります(9500 / (1000 - 500)
)。
というように、レバレッジと実効レバレッジは紛らわしいですがまったく異なる言葉のようです。
レバレッジ(証拠金倍率)の定義は、
レバレッジ = 取引価格 / 証拠金
で、
実効レバレッジの定義は、
実効レバレッジ = (現在価格 * 数量) / (口座残高 + 評価損益)
です。
以下の3つの記事が参考になります。
https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/securities/09081901securities.pdf
レバレッジコースと実効レバレッジの違いを教えてください。 | よくあるご質問 | FXならヤフーグループのYJFX!
証拠金倍率と実効レバレッジの違い | 「必要証拠金」に関するQ&A :【公式】維新の介 校長の「失敗しないFX lifeschool」
レバレッジと騰落率について
それでは、レバレッジ10倍をかけてそのまま長期保有したときの日々の騰落率はどうなるでしょうか?原価格の騰落率の10倍でしょうか?
そうではなく、前日の引け(当日の寄り付き)時の実効レバレッジ倍になります。
例えば、10000円の先物の買いポジションひとつを1000円の証拠金で建てたとします。口座の評価額は1000円です。
このとき、実効レバレッジは10倍(10000 / (1000 + 0)
)です。
次の日、価格が+20%になりました。価格は12000円です。2000円の含み益になったので口座の評価額は3000円です。
このとき、実効レバレッジは4倍(12000 / (1000 + 2000)
)です。
さらに次の日も価格が+20%になりました。価格は14400円です。4400円の含み益になったので口座の評価額は5400円です。
このように、口座の評価額は1000円、3000円、5400円と変動しました。 1000円から3000円は+200%、3000円から5400円は+80%です。
1000円のときは実効レバレッジが10倍だったので+20% * 10で+200%に、 3000円のときは実効レバレッジが4倍だったので+20% * 4で+80%になります。
といったように、レバレッジをかけたときの評価額の騰落率は、もとの価格の騰落率を実効レバレッジ倍したものになります。
証明
「たまたまじゃないの?」と思うので、確かめるために一般化して証明します。
記号を以下のように定義します。
- 現在価格 P
- 取引数量 N
- 残高 D
- 評価損益 V
とします。
現在、評価額は D + V
、実効レバレッジは (P * N) / (D + V)
です(実効レバレッジの定義)。
そこから、価格が P' (= P * (R / 100 + 1))
に変化したとします。Rはもとの価格の騰落率(%)です。
そうすると、変化後の評価額は D + V + (P' - P) * N
になります。
評価額の騰落率(%)は、変化後の評価額を変化前の評価額でわったもの(%にするためにそこから1を引いて100で割ったもの)になるので、((D + V + (P' - P) * N) / (D + V) - 1) * 100
になります。
整理すると、
(P' - P) * N = (P * (R / 100 + 1) - P) * N = P * N * ((R / 100 + 1) - 1) = P * N * R / 100 (D + V + (P' - P) * N) / (D + V) = (D + V) / (D + V) + (P' - P) * N / (D + V) = 1 + P * N * R / (D + V) * 100 ((D + V + (P' - P) * N) / (D + V) - 1) * 100 = (1 + (P * N * R / (D + V) * 100) - 1) * 100 = (P * N * R / (D + V) * 100) * 100 = P * N * R / (D + V) = R * (P * N / (D + V))
となります。
P * N / (D + V)
は変化前の実効レバレッジだったので、原価格の騰落率Rに実効レバレッジをかけた値が評価額の騰落率となりました。
これで証明することができました。
レバレッジETFと実効レバレッジ
レバレッジETFは、原指数の日々の騰落率のN倍の値動きをするETFです。そうではないレバレッジETFももしかしたらあるかもしれませんがここではそういうETFをレバレッジETFとします。
現指数の日々の騰落率のN倍の値動きということは、ETF内の資産の実効レバレッジが毎日Nに調整されるということになります。
先物やCFDを長期保有したときの騰落率と実効レバレッジ
先物やCFDを長期保有するときは、実効レバレッジが日によって変わることになります。
なので、騰落率は原指数の日々の騰落率の一定数倍になることはありません。
ただし、買い建てた時点でのレバレッジをN倍とすると、その時点から現在までの原指数の騰落率をRとすると現在までの口座の騰落率はR*Nになります。
S&P500は年平均+7.5%くらいだったと思うので、年初に2倍のレバレッジでS&P500のポジションを買い建てて放っておけば、その年にS&P500が+7.5%だったとき口座の評価額は年末には+15%になることになります。
(じゃあ10倍かければ+75%じゃん!と思うかもしれませんが、一時的に下がると強制ロスカットや追証が発生するかもしれないのでおすすめはしません)
ただ、実効レバレッジは指数の上昇につれて下がるので、次年度も引き続き放っておくと実効レバレッジが下がってどんどん効率が悪くなっていきます。
実効レバレッジを毎日調整するレバレッジETFは、このように1年の騰落率の一定数倍になることはありませんが、 その代わり毎日実効レバレッジを調整するので、指数の上昇時に効率が悪くなるということがありません。
おわりに
この記事では実効レバレッジと騰落率の関係について見ていきました。
自分自身、実効レバレッジという言葉を知らずにレバレッジレバレッジ言っていたので、これからは区別して使うようにしていきたいです。
また、単に「レバレッジ」という言葉が使われた文章を見るときには、取引開始時のレバレッジの話なのか実効レバレッジなのかを区別して読むようにしたいです。