SPXLなどのレバレッジETFは日次で実効レバレッジを2倍や3倍などに調節していますが、日次ではなく週次、月次、年次で行うとどうなるのかが気になったので、検証しました。
コードはこちらにあります。間違っていたら教えて下さい。
実効レバレッジについては以下の記事を参照してください。
検証内容
Yahoo! Financeから取得したS&P 500の日次データを使います。悪かった年も含めたいため、2000年初から2019年末までの期間で行います。
S&P 500の日次データを使って、自前でN倍のレバレッジをかけるシミュレーションをします。
日次、週次、月次、年次それぞれでその期間毎に全ポジションを決済してポジションを建て直します(レバレッジをN倍に調整します)。この操作をリバランスと呼ぶことにします。
時価評価額が必要証拠金を割り込むと追証発生としてその日の底値で強制決済します。
なお、S&P 500の現物のデータを使うので、金利コストや手数料などは含まれていません。基本的にはレバレッジをかければかけるほどこれらのコストは大きくなっていくと思いますが、そこは無視しています。また、配当は含みません。
例
週次でリバランスを行うことを考えます。
最初に差し出せる証拠金は100、最初のS&P 500の値も100として、レバレッジは3倍とします。 このとき、最初はサイズ3のポジションを建てられます。
株価指数の最大レバレッジは10倍なので、必要証拠金は100 x 3 / 10 = 30です。
S&P 500が以下のように遷移したとします。
週 | 終値 | 安値 |
---|---|---|
1 | 110 | 100 |
1 | 120 | 110 |
1 | 140 | 130 |
1 | 130 | 120 |
1 | 150 | 140 |
2 | 150 | 110 |
2 | 150 | 110 |
このとき、1週間目のポジションサイズと評価額、必要証拠金は以下のように遷移します。
ポジションサイズ | 評価額 | 必要証拠金 |
---|---|---|
3 | 130 (= 100 + (110 - 100) x 3) | 30 |
3 | 160 (= 100 + (120 - 100) x 3) | 30 |
3 | 220 | 30 |
3 | 190 | 30 |
3 | 250 | 30 |
1週間目が終わった時点でリバランスを行います。1週間目が終わった時点では評価額は250です。証拠金250で現在価格150をレバレッジ3倍で建て直すと、ポジションサイズは5になります(150 x 5 / 250 = 3)。 必要証拠金は150 x 5 / 10 = 75です。
このポジションサイズで2週間目を実行します。 が、2週間目の初日の安値時点での評価額(250 + (110 - 150) x 5 = 50)が必要証拠金を割り込んでいます。 なので、強制決済されて安値で決済されてしまったとします。即建て直すとポジションサイズは1.36になり(110 x 1.36 / 50 = 3)、必要証拠金は15になります(ポジションサイズは整数にならなければいけないので1.36というのは実現不可能ですが、簡単のためここでは有理数も許すことにします)。 そして2週間目1日目の終値は150なので、評価額は50 + (150 - 110) x 1.36 = 104.4になります。 2週間目2日目は追証にもかからず終値は同じなので104.4のままです。
…という感じでシミュレーションをしていきます。
シミュレーション結果
日次、週次、月次、年次それぞれに対して、1.5から3.0倍までの0.5倍刻みでシミュレーションを行いました。
まず1倍(現物)のグラフはこちらになります。これがベースです。
各シミュレーションの結果はこちらです(小さいので画像をクリックして御覧ください)。
リバランス | レバ1.5倍 | レバ2倍 | レバ2.5倍 | レバ3倍 |
---|---|---|---|---|
日次 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
週次 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
月次 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
年次 | ![]() |
![]() |
![]() |
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なお、追証が発生したのは以下の13回です。年次リバランスはレバ2倍でも起こり、2.5倍からは月次リバランスでも、3倍は週次リバランスでも起こりました。2010年以降はどの年も発生していないようです(2020年も含めていたら発生していると思います)。
2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2002-07-19, period=yearly, ratio=2.0 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2002-07-23, period=monthly, ratio=2.5 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2008-11-19, period=monthly, ratio=2.5 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2001-09-19, period=yearly, ratio=2.5 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2009-03-05, period=yearly, ratio=2.5 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2008-10-10, period=weekly, ratio=3.0 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2001-09-19, period=monthly, ratio=3.0 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2002-07-15, period=monthly, ratio=3.0 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2008-09-29, period=monthly, ratio=3.0 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2008-10-10, period=monthly, ratio=3.0 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2009-03-03, period=monthly, ratio=3.0 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2001-03-22, period=yearly, ratio=3.0 2020/09/14 10:18:43 margin call is executed: date=2002-07-22, period=yearly, ratio=3.0
わかること
- レバ1.5倍はどのリバランス間隔でも大差ない
- 週次リバランスがどの倍率でもいい結果になった
- 基本的にはリバランス間隔が長いほど追証が発生しやすくなる
- リバランス間隔が長いほどブレは小さくなる
- リバランス間隔が長いほど、連続下落時は下落が急になる
- リバランス間隔が短いほど、連続上昇時は上昇が急になる
感想
日次リバランスを行うレバレッジETFは減価が〜という人が最近多く、(現物は置いておいて)じゃあ最初にレバレッジを設定してリバランスせずに置いておく方法のほうがいい結果になるんだろうな〜と思っていたのですが、上昇もしくは下落トレンドが発生しているときには逆効果になるのと、追証リスクが高まるので、それほどいい結果にはなりませんでした。というか日次リバランスよりも悪い。やはり自分で手を動かして検証してみるのは大事ですね。改めて日次3倍レバレッジETFよくできてるなと思いました。
また、どのリバランス間隔でも2000-2009年のような相場に対しては厳しいので、信じる気持ちを強く持たないと持ち続けられないような気がしました。最大ドローダウン95%~99%あたりまで行くと思うのですが、このような相場のときにレバレッジETFを持っている人・レバレッジを自前でかけている人はどのような行動をするつもりなのかが気になりました。